PTA研修会・家庭教育セミナー

【主催】
伊丹市PTA連合会
【時期】
毎年 未定
【参加者】
単位PTA 理事 他

実施内容

例年はPTA研修会・家庭教育セミナー別での開催でしたが、コロナ禍などの影響により、合同での開催

【令和4年度】

①実施日時

令和5年2月1日(水)10:00~12:00

②場所

総合教育センター2F 研修室

③参加者

単P 理事

④講師

露の団姫(つゆのまるこ)

落語家兼僧侶、高校1年から僧侶と落語家になりたかった。卒業してすぐに入門。比叡山延暦寺で修行。現在は、天台宗の僧侶、住職である。

豊来家大治朗

20歳会社員のとき、大神楽の師匠と出会う。芸を見て感動し、入門を決意した。キリスト教徒である。

⑤テーマ

「みんながともにいきいき生きるには」

⑥内容

1.落語

僧侶が説法をおもしろおかしく話したことが古典落語の起源。団姫氏は古典落語や自作の仏教落語に、精力的に取り組んでいる。
本日の演目は仏教落語「地獄めぐり

2.大神楽
  • 傘まわし(玉、金輪、升)
  • 剣で取り分け(お手玉)
  • 剣の輪くぐり(日本でただ一人の技)

3.講演

【内容1】

  • 団姫氏は18歳で落語家へ入門し、3年間修業。2011年、天台宗で出家。
    2012年に比叡山行院での修業を行ない僧侶に、2021年には住職になる。
  • 大治朗氏は20歳の会社員のときに太神楽の師匠と出会い弟子入りする。
    ADHD(注意欠陥多動性障がい) という特性と、ナルコレプシー(過眠症の病気)を持つ。
  • 結婚13年目のお二人はによる、ADHDの当事者とパートナーとしての座談会。
ADHDとは…
原因はわからないが、脳内のメカニズムは解明されている。ただ、親や環境、育て方、愛情不足のせいではないことは明らかである。誰のせいでもない。遺伝や生まれ持ってのもの。
  • ADHDの特徴(大治朗氏のエピソードを交えて)
  • 自分と相手の持っている情報の境界線が曖昧。
  • 優先順位や段取りが分からない。目の前のことが一番。経験を積むことで少しずつ分かるように。
  • こだわりが強い。
  • 危機感がない。その特性のおかげで剣の輪くぐりができている。
  • パートナーの心がけ(団姫氏の試行錯誤を交えて)
  • 「察する」ことができないので、冷静にはっきりと感情を伝える
  • 「自分と相手を別の乗り物だと思う」と、ストレスが減る。それぞれの良さがある。
  • 「怒りは心の無駄遣い」「他人は変えられないが自分は変えられる」
  • 「この人を変えなければ、ではなく、この人が受け入れられやすい環境を整える」
※カサンドラ症候群とは…
家族や身近な人にASDがあることでコミュニケーションが難しく、人間関係の問題や心身の不調(不安や抑うつなど)が起きている状態。
カミングアウトについて
受け入れてくれる相手の前では気持ちが楽になるが、受け入れられない人もおり失うものもある。
誰かれ構わずするものではない。話す相手を選ぶ。無理してする必要はない。
タイミングや相手選びは自分次第。相手との関係性をよく考える。
  • 発達障がいは「発達凸凹(でこぼこ)」
  • できる・できないの差が激しい。
  • 環境があっていなければ「障害」になるが、暮らしやすく自身の特性にピッタリな環境であれば「障害」とはならない。
※ギフテッドとは…
並外れた成果を出せたり、突出した才能を持つ人。
ほんのひと握り(例、ニュートンやアインシュタイン)

【内容2】

発達障害について
原因
頭の流れがうまくいっていない。
伝達物質がうまく働いていない。
ADHD:注意散漫。
ASD:過集中。
LD:文字が読めない。先生の話を理解するのに時間がかかる。文脈が読めない。漢字の捉えが難しい。(愛知-愛媛、福島-福岡 間違える)。
段取りがうまくいかない。親の育て方ではないということははっきりしている。生まれ持ったもの、遺伝的なものも多いといわれている。どちらかの親が発達障害であることが多い。愛情不足ではない。

結婚式の日程を決めるとき、お父さんがその日に友達と遊ぶ約束をしていた。通常であれば、予定を変更し、式を優先させるところを結婚式の予定を崩せないため、結婚式の日程を変更することになった。発達障害の特性に似たところがある。大人になってから、受診、投薬治療を開始した。子どものとき通知表に「掃除を丁寧にしてくれるが時間内に終わらないので終わらせましょう。」と書かれたことがある。今やっていることが一番となってしまうため、他のことが目に入らない。自分の持っている情報と相手の持っている情報の境目がない。自分が知っていることを相手も当然知っていると思い込んで、話をするので相手とずれが生じる。社会人になって工場に勤めていた。作るものを順番に作るが、急に新しく来た作業が入ると混乱する。これは経験値で慣れてできるようになっていった。なので、特別仕事に支障は生じていなかった。ナルコレプシー(過眠症)を持っている。

※ナルコレプシー:
どこでも寝てしまう。気を失っているので自分では気づかない。ADHDの50%がもっている。極度のストレスや緊張で脳を守るために寝てしまうことが原因と考えられている。事前に「大丈夫」と安心を与えるとよい。服薬により2、3日で治った。飲んでいない日ははっきりわかる。(昼から眠そう。)日常生活では、社長との面談時に突然寝たり、回転のこぎりの使用時に寝ていたりしたことがあった。奥さんと結婚して初めて気づいて受診した。
こだわりの強さ、エピソード

猫事件:会社の工場内で野良猫が子どもを産んだ。1匹飼わないかと言われて連れて帰ったが、会社が借りてくれていたアパートで、他の住民から苦情がきた。社長から飼うのをあきらめるように言われて「猫か会社かどっちかにせえ」と言われて会社をやめた。どうでもいいところには全くこだわらないが、自分のこだわっていることに関しては異常にこだわるため、意思疎通が難しいことがある。こだわりのために、会社をクビになったり、離婚の原因となったりして、生きづらさを抱えている人が多くいる。

当事者として、どう対処していけばよいか
  1. 本やネットから情報を得て勉強する。
  2. 専門家の本には、「まわりの人を怒らせることがあるので、すぐに謝ることが大切です。」と書いてあることが多いが、空気が読めないので、そもそも怒っていることがわからない。周りがはっきり伝えることが大事。「察して」ということはお互いにしない。当事者の書いた本を読む。
妻から見た結婚生活について

「カサンドラ症候群」・・・発達障害のパートナーがしんどくなりうつ状態になる。私がおかしいんだろうか、私が何とかしないと、と思うことが多く、ママ友などに相談しても解決しない。ストレスがたまっていた時期があった。通院も一緒に行って夫の症状を説明していた。医師より「あなたとこの人を違う乗り物だと思いなさい。あなたが新幹線でこの人が飛行機だとして、それぞれ全く違うが、それぞれの良さと働きがある。乗る場所と行き方も違うが、同じところに着く。」と言われて、気持ちが楽になった。自分が気持ちよく生きるには、自分が少し変わることも必要だと思い、この人を社会に適用させようとするのをやめた。生きやすい環境をつくる方がよいと思い、発信をし始めた。今は生きやすい環境を作るための土壌づくりをしている。

年に1回ストレスが爆発することがある。理由は「危機感がないので、見ていてイライラする」から。そのときに医師から「危機感がないからいいんですよ」と言われた。剣の輪くぐりができるのは危機感がないから。前にその技をやっていた弟子は、足を切って16針縫い、芸人をやめた。それを聞いても怖いという感覚がないから、その芸を今も続けられている。短所が長所になっている。師匠が特徴を見抜いて、技を与えてくれたのだと思う。

カミングアウトについて

隠していてしんどかったが、カミングアウトして受け入れてくれる人が増えて楽になった。しかし、理解してくれなくて、仕事がなくなったこともある。相手との関係性や失うものを考えて、カミングアウトをする。無理にカミングアウトをしなくてもよい。「アウティング」といって、カミングアウトをされたひとが、勝手に周囲にカミングアウトを行うという行為があるので、言う人を選んで伝えることが大事。カミングアウトされた方は、「カミングアウトしてくれてありがとう」と信頼されている証拠であるという気持ちを持つことが大切。

発達凸凹

最近では、発達障害ではなく「発達凸凹」という言葉が使われている。能力が平たんではない人たち、例えばギフテッドは凸の方が特に優れている人たちで、有名人ではアインシュタインやニュートンもギフテッドと言われている。その凄い能力を伸ばしていこうという動きが広まっている。しかし、それらの人たちはごくごく稀である。発達凸凹の人は昔からいたと思う。例えば、自分の名前しか覚えられない釈迦の弟子がいたが、掃除だけが唯一得意で、掃除を20年間続けなさいと言われて、そのとおりに20年続け悟りを開いた人がいる。その人は天才バカボンのレレレのおじさんのモデルと言われている。バカボンとはサンスクリット語の「バキャボン」で「悟りを開いたひと」という意味がある。バカボンのパパは、「これでいいのだ」というが、それは、あなたはあなたでいいですよと肯定してくれているということである。環境と凹が合わさると、障害になる。環境があうところだと障害にはならない。本人が気づくのは非常に難しいため、周りが気づいてあげることとその人の特性に近づけていく支援が大切。凸凹の人が暮らしやすいようにしたい。

朝起きたらハグをすると神経伝達物質が通りやすくなるという説があるので、毎朝ハグをしている。

⑦質疑応答

凸凹があるんじゃないかと思って検査されたきっかけは何だったのでしょうか。
わが子がそうではないかと悩んでいるママたちがたくさんいる。
仕事に支障が出ていたことが大きい。周りも検査を受けた方がいいといった。当事者が困っていないことが多いので、周りから言われても、「大丈夫」となることが多い。当事者が困っているかどうかと自分の状態を客観的に言ってもらうことが大事。また、検査を受けたあとのイメージがとても大事。その子の才能を伸ばしていけるような、プラスの支援や、将来を具体的にみつけやすくなるなどの理由があると暗い話ではなくなる。知ってもらうことと診断を恐れない。
自分の子どもがLDかなと思うことがあったので受診したが、グレーゾーンではなく自閉症と言われた。アンガーコントロールの本などを読んだが、子どもにとてもイライラする。6秒待てと言われても待てない。いい方法を教えてほしい。
怒ることは仕方ないので、怒りを長引かせない努力をしている。怒りを短くする見立てを立てる。自分の気持ちに素直になってよい。子を思う思いがイライラになっているので、お互いが吐き出せる相手が必要。
高校2年の子が、3歳で発達障害と診断され、小中ほぼ不登校、塾へ行かせていたが、全然頭に入らなかった。ダンスが好きだったので、今は専修学校へ行っている。すぐ眠るという特徴があり、今日の話を聞いてそうなんだとびっくりした。進路のことがあるが、先日こどもが、「私のことはもう心配ないよ」と言ってきた。今は何の根拠もなく自信満々でいられるので、好きなことを仕事にできたらいいなと希望が持てた。学校という枠が好きではない。
ナルコレプシーは、投薬で劇的に変わるので、きちんと受診をして調べた方がよい。

⑧追記

最後に お寺には、大人になってから生きづらいと相談に来る人が多く、その多くが特性のない人である。原因として、全てにおいて平均を求める教育のせいではないかと思う。小さい時から、好きなこと、得意なことをしっかり伸ばしていくことで、将来生きづらさを持ちにくい気がする。学校に行っている子という像は平均的なあり方で、そのような平均的なあり方を求めないことが大切だと思う。